□無色透明ソーダ水□




「この車、後部座席に対してクーラーのききがイマイチじゃあないですか? もしかして欠陥車かも、リナリーはどう思います?」

「違うわよ、アレンくん。中古車を買うなら買うで、しっかりリサーチしなかったリーバーが駄目駄目なんだと思うわ」

ツインテールにしている黒髪も武器なのではないだろうかと誰もが思う好戦的な美少女の手にはカキ氷のカップ。ちなみにブルーハワイ、練乳がけ。
銀というより白に近い色の髪をした一見好青年の右手には
ソフトクリーム、左手には白熊という名のこんもり盛られたかき氷。

頼むからお前らそれをこぼすなよと、祈るような気持ちで
音だけ煩い空調を備えた中古車のハンドルを握るリーバーは、助手席から注がれている視線に気付いて顔を引き締める。

保護者のつもりか監視役のつもりかは知らないが、勝手についてきたお邪魔虫は二人。
小汚いとか狭いとか文句をこぼしながら、遊ぶためのグッズが詰め込まれた大きな鞄がトランクにはのっている。
出来れば遊びの方に集中してもらえないだろうかと期待しつつ、リーバーは自分の隣に座っている長い髪の美少女、いや年齢的には美女という表現が正しいかもしれない年下の恋人(仮)をそっと観察する。

彼女はリーバーの上司にあたるコムイの妹の友人で、十代前半の頃から見知っていたのだけれど、魅力的な女性として認識し始めてからはまだ一年もたっていない。

神田のすぐそばにはいつもリナリーがいて、悪い虫がつかないようにいつも見張っている。しかし、その監視網をかいくぐる悪い輩はいるもので……。

それなら、いっそ神田に似合う素敵な恋人を見つけるのだと発案したのはリナリーだった。
それは親切とかお節介から生まれたものでは決してない。目の届かない場所で、神田が運命の恋に落ちるくらいならいくらでも自分が操作できる相手と神田をくっつけてしまおうという短絡的な意図が見え見えである。

それでも、神田と付き合ってみない? と囁かれて、リーバーは嫌とは言えなかった。

口は悪く、態度もでかい。女らしさというものにはまるで縁のないさばさばした神田ユウではあるが、見た目だけは
無駄に見た目だけは面食いだと自負するリーバーの好みにぴたりとはまるのだ。

座席や足元に飲食物をこぼして汚すことなど気にも留めてない後部座席の二人をちらりと見た後で、神田はリーバーに小声で謝る。

「……悪いな、リーバー。あいつら、何かいっつもうるさくて」

これが初めてのデートではない。最初は映画、次は遊園地。そのどちらにも彼ら二人はお供としてやってきた。

デート中にも関わらず、やっぱり僕にしませんかと神田に迫っては年下だからという理由できっぱり振られるアレンはもう何のために来ているのだかわからない状態だった。

それでも、迷惑そうにしながら、彼を見る神田の目は時々優しくなる。大切にされていることをくすぐったがっているようなその表情がリーバーにはとても魅力的に思えた。

大学卒業までにはあと二年かかる彼女と社会人をやっている自分では精神面で開きがある。十代で付き合っていた恋人に抱いたような幼稚な欲望を彼女に対しては持ったことがなかった。

その外見のせいで、彼女はもてるし、リナリーにすすめられるままに何人かの男とデートだってしているのだろうけれど。無防備だったり、照れ屋だったり、時には年下のリナリーやアレンに対して見せるお姉さんぶった態度はきっとリーバーしか知らない。

こんなのデートって言わないよなと笑ってくれる神田が、本物の恋に目覚めてくれるのをゆっくり待つ余裕がリーバーにはある。

その余裕が多分、神田を安心させるのだろう。

バックミラーで二人が食べることに集中し始めたのを確認してから、神田はリーバーの手をちょんとつつく。
赤信号で停車してから、ようやく横を向いたリーバーにしかわからないように、神田は唇の動きだけで意思を伝えた。

(今度は、二人で)

秘密の約束に、リーバーはかすかに頬を緩ませた。



軽快とは言いがたい走りで、四人を乗せた車は目的地へと到着した。
青い海が広がっているはずの、砂浜に降り立った瞬間、ぽつぽつと細い雨が白い地面を水玉模様にしていく。

「ここまで来て、雨なんてついてないですよね。僕なんか神田の水着姿が見たくてバイト休んだのに」

アレンがそう言うと、リナリーはため息混じりにつぶやいた。

「日ごろの行いが悪い誰かさんが来なかったら、きっと晴れてたわね。残念」

「どういう意味ですか? リナリー」

アレンよりは一つ年上ということをいつだって忘れない強気が売りの少女は、挑戦的に囁く。

「アレン君がぁ、年上の女の人ばっかり泣かせてるから、お日様だって意地悪したくもなるわよね」

「それは、昔のことでしょう! 今の僕は神田だけをっ!
余所見なんてしません」

大声で告白されているというのに、神田はまったく気にしていなかった。
二人の諍いには入っていかず、何か言いたそうにリーバーの顔をちらりちらりと見ている。

そんな微妙な展開には気付かない若年層の二人は、車の中での暴飲暴食がたたったのか、あたりをきょろきょろと見回し始めた。

「……トイレなら、ココに来る途中にあったコンビニで借りれるかもな」

助け舟を出してやると、二人は争うように走っていった。


「ホント、元気いいよな、あいつら」

軽く笑ったリーバーの傍に歩み寄り、神田は意を決したように叫ぶ。

「見たかったのか?」

「……はぁ?」

「その…、だから、水着……」

しどろもどろにそう言うと、うつむいて顔を赤くする神田は衝動的に抱きしめたくなるくらい可愛らしくて。リーバーはくらっとしかけた自分を叱咤した。

「え、…あ、いや、俺は」

答えに窮したリーバーに、神田は更に顔を赤くしてぼそっと衝撃的な台詞をこぼした。

「……俺は、その、お前に見せたかった。そのために、選んだから」

言ってしまってすっきりしたのかふわりと笑う神田は、本当に綺麗で……。

リナリーとアレンというお邪魔虫がついてきてくれたことに、リーバーは初めて感謝する。
彼らが戻ってくるという思いが、最後の最後でブレーキをかけた。そうでなければ、彼女を思いっきり抱きしめて、キスをしていただろう。

ああ、でもこのくらいは許されるだろうか。

リーバーは近くにあった神田の右手を優しく握った。
一瞬、動きが止まったものの、彼女はそれを振りほどかない。彼らが帰ってくる前には、手を離さなければいけないのだろうけれど。

「…これからも、よろしくな。神田」

「……ん」

こくりと頷く彼女が愛らしいとリーバは思った。


しばらくして戻ってきた彼らは、三人に増殖していた。

きょとんとする神田とリーバーに、アレンとは仲が良さそうな赤い髪の青年は人懐こい笑顔を向けてくる。

日本人ではないだろう緑色の瞳。その片方は白い眼帯に覆われている。服装はコンビニの店員っぽいものであった。
年は神田と同じくらいにも見える。

一度見たら忘れそうもない派手な外見をした異国人は、神田とリーバーに自己紹介をする。

「ハジメマシテ、ラビっす。今、そこのコンビにでバイト
中にアレンとばったり会って……」

「アレンと知り合いなんだ?」

とりあえずそう質問してみたリーバーをスルーして、ラビの視線が神田だけに集中する。

皆がもしや……と思い、危機感を覚え始めたその時、いかにも遊んでいそうないかにも場慣れしてるっぽい色男はお茶目にもウィンクをして見せた。

「……おねーさん、目茶苦茶美人サンさぁ。名前、聞いていい?」

リナリーが慌てて、二人の間に割って入ろうとする。それを制するように、ラビが素早く移動する。
キスするくらい近くに神田に顔を寄せて、さっきとは違う本気っぽい雄の声で…。

「…ここで会えて、すっげぇ幸運」

そんな台詞を囁かれた当の本人は、どこの乙女かと問いただしたくなるくらい女の子の顔をしていて。

リナリーとアレンがムンクの叫びのような表情になる。
リーバーはいきなり目の前で繰り広げられ始めたラブロマンスに困惑するしかなかった。




運命の恋はいつも突然に!!

でも、運命ってきっとくるくる回る歯車みたいなものだからどこで止まるかはわからないけどね?
努力が実るか、時の運かは、やってみないとね?

さあ、とにかく、はじまりはじまり!!




END


あとがき

リクはアレ+リナ+ラビ→神田嬢 ラビユウ落ちでした☆
國さまのリクに答えてるかどうかわかりませんが、明るいものを目指したつもりです。
リーバーを出せなんてリクにはなかったんですけどね。
ラビュに対抗出来そうなのは、大人の男かなと思ってみたりしたものですから。

途中までリバユウですね。
すみません。

書き直し、承ります。





anti-sweet」の遼子さんより頂きました!私なんかが4321HITを踏んでしまってすみません…!


以前からひっそりこっそりファンをやっていたのですが、「ご挨拶するのはこれが初めてだから控えめに…!」と思ったのに己の欲望に抗いきれませんでした。
……あまつさえCP設定自体入り組んでいるのに、嬢やら大学生パロやらたくさん我が儘を言ってしまいました。(駄目なヤツ)
しかし、その我が儘をこんなに見事な文章にまとめて下さった遼子さんの技量には、ただただ感動するばかりです。
ユウたんかわいい!ラビ男前!(暴走気味)(すみません…!!)

遼子さん、本当に有難うございました!!これからもサイトに通い詰めさせて頂きます…!






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